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孤譚

思いつきで始めるブログ。漫画や音楽、アニメ、小説などの感想や、突飛な思いつきなどを書く。プログラミングが趣味だから、そういう話もしたいところ。一度失敗したのに懲りないのはいつものことだ。

漫画の紹介・感想 その1 「ビーンク&ロサ」、「大好きが虫はタダシくんの」他4作

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漫画の紹介・感想 その1 「ビーンク&ロサ」、「大好きが虫はタダシくんの」他4作

はじめに

 無駄な論説を振りかざすのが大好きなので漫画の紹介をしてみる。ネタバレは極力回避するが、起承転結の承辺りまでは書く可能性がある。紹介する漫画は下記の通り。必ずしも肯定的に紹介するとは限らないことに注意してほしい。何の専門性も権限もない素人だが、良ければ目を通してほしい。稀に、ネタバレを白い文字で隠していることがあるため、そこにも注意してほしい。

目次

  1. ビーンク&ロサ
  2. 大好きが虫はタダシくんの
  3. ちーちゃんはちょっと足りない
  4. きのこ人間の結婚
  5. 橙は、半透明に二度寝する 第1巻
  6. 断罪のユディト

ビーンク&ロサ

模造クリスタル

 私がこの漫画を読んでみようと思ったのは、著者の模造クリスタル氏の「金魚王国の崩壊」が好きだったからである。思えば、「金魚王国の崩壊」の主人公の不器用な生真面目さに共感を覚えていたから、その漫画を面白いと思っていたのだろう。ところで、「少女王国の崩壊」と関係あるんですかね。

 率直な感想を言えば、私は「ビーンク&ロサ」があまり好きではなかった。あまり面白いと思えなかったのだ。ただ、見るべきところがないわけではない。むしろ、その見るべきところのアクが強すぎるのである。万人には薦められないが、変わったものを読みたい人には薦められる作品だと思う。

 この漫画には主となるストーリーが一応はある。主人公は題名に出てくるビーンクとロサだ。ビーンクはどこか弱々しいところのある大人の男性で、ロサはしっかりとした女の子。冒頭では二人が一体どのような境遇にあるかは一切語られない。二人が何をしている人物なのかは、物語が進むにつれて語られていく。主軸となる話は寂しさを残して終わっていく。

 前述の通り、この漫画はかなり変わっている。冒頭では主人公の境遇は語られないと先に述べたが、実のところ、第1話の扉絵をめくって最初に登場する二人組は主人公でも何でもないゲストキャラクターである。そのゲストキャラクターの話は、メインストーリーと関わっているかといえば何とも言えない。深読みすれば関わっているような気がしなくもないくらい。この漫画ではそのような話がいくつか出てくるのだが、最も面白いところがそのサイドストーリーと呼べるかもよく分からない何かであり、それがこの漫画の味でもある。

 この話が日常に近いものだったり、漫画というジャンルに関わる話だったり、論理で説明することができないものだったりする。特に私が気に入っているのが、第2話の肉の絵を書こうとする少女の話である。何が好きって言えば、その、なんだ、オチが。

 これだけだとメインストーリーが空虚なのかと勘違いされそうだから補足するが、このメインストーリーには主題があるように私は思う。その主題は諦めだ。この物語にはどんな悲劇も解決できる英雄も、何事も台なしにしたがる悪役も存在しない。悪には悪にならざるを得なかった理由がある。現実世界に遍く存在する妥協や諦めが、メインストーリーの端々に関わってくる。これがなんとも煮えきらない感情にさせるのだ。

 思えば、「金魚王国の崩壊」にも諦めや妥協というものがつきまとっている気がする。作者はこのような主題に興味がある方なのだろうか。作者は同人での活動が長いと聞くが、他の作品はどのような話なのだろうか。気になるところだ。

大好きが虫はタダシくんの

阿部共実

 かなり奇妙な題名だ。題名の意味は実際に読んでみれば分かる。というか読める。作者が表題作をpixivで公開しているのだ。前にインターネットで流行ったことを覚えている方もいるだろう。余計な背景は考えず、ただ読んでみるといい。pixivは会員登録しないとまともに閲覧できなかった気がするけれど、まあ、うん。

大好きが虫はタダシくんの

 この書籍は短編集となっている。最初のカラーページではフルカラーならではの漫画が2作 (「乙女心」が特に好き) 、それ以外に表題作含め5作収録されている。どの作品も活躍するのはほぼ女の子だ。全部が表題作のように精神に重たくのしかかる作品というわけではない。気楽に読める漫画の方がページ数は多い。

 例えば「ドラゴンスワロウ」。徹底的にボケ倒す女の子と、その女の子にベタ惚れしつつツッコミを入れる女の子の二人が主人公である。ボケる子がどれくらいとぼけているかと言えば、ソフトボールの天才なのに、花嫁修行のためにソフトボールを止めてしまうほどだ。二人の間で交わされるボケの応酬と、二人の可愛さを楽しむ感じの作品だ。なんか読んでいるとこっちもぱっぱらぱーになっていく感じがある。

 逆に、精神的に揺さぶりをかけてくるのが、前述の表題作と、「あつい冬」、そして「デタジル人間カラメ」だ。この3作は人を選ぶ。阿部氏の作品はどれも人を選ぶような気もするけれど、とにかくこれらの作品はその中でも特に人を選ぶ。人を選ぶけれど、私はこの3作品をとりわけおすすめしたい。なお、後ろの2作品はあらすじが書けないほどの短編になっている。一言だけ言えば、「あつい冬」は突如の理不尽な喪失の話で、「デタジル人間カラメ」は題名通りに崩壊した話である。ちなみに、私は「デタジル人間カラメ」を初めて読んだとき、あまりのことに思わず目眩がした。

ちーちゃんはちょっと足りない

阿部共実

 再び阿部氏の漫画。この漫画は賞をとったとかで割と有名だ。そして、私にとってもおすすめの1冊である。どういう意味でおすすめなのかは、前に紹介した短編集の方の文章を見て察してほしい。

 この作品の主人公は題名にもあるちーちゃんと、その親友のナツ。題名通り、ちーちゃんは中学生にしてはかなり足りない。割り算もできないし、理科のテストで解答欄に全部、キ○○マと書くほどに足りない。体格も小さく、背伸びをしたがりそうな年頃の割には、子供っぽい趣味をしている。ちーちゃんとナツは他の友達とも遊んでいるが、二人は特に仲がいい。また、ちーちゃんの陰に隠れているが、ナツもそれほど恵まれているわけではない。とはいえ、ちーちゃんほど抜けているわけではなく、あくまで普通の範囲であり、人並みに他人よりものを持っていなくて、人並みに一歩踏み出すのを恐れる。ナツは普通の人なのだと私は思う。

 この作品では最初に二人の日常が描かれる。遊んだり、学校に行ったり、買い物をしたりといった日常だ。ただ、二人の日常はある事件を契機に大きく変化する。ある生徒が持っていたお金が無くなってしまったのだ。この盗難事件は、ちーちゃんとナツの友人や、万引きしていそうなギャルを巻き込んだ騒動に発展する。それから少しして、ちーちゃんはナツにある物を見せた。それは教室から消えたのと同額のお金。普段はすかんぴんのちーちゃんがそんな大金を持っているはずがない。ちーちゃんはナツに笑顔で「あげる!」と言ってお金を差し出した……。

 その後の顛末がどうなったか、それはあなたの目で確かめていただきたい。この作品はここから心理描写がすさまじくなる。是非とも楽しんでほしい。そして、ちーちゃんとナツの二人の異なる行く末を是非ともご覧になってほしい。果たして、あなたはナツのことを他人事として片付けることができるだろうか。

 この作品の結末はやや特殊である。この結末をどう評価するかは個人次第だろう。私は、何と言うか、その、エンディングの後、ナツがどうなっていくかを考えると、ね。

きのこ人間の結婚

村山慶

 この漫画がどういう漫画かといえば、「『きのこ人間の結婚』刊行記念 村山慶ロングインタビュー “「菌類が人間の形をしていたらどういう社会を営むか」を考えた”」に紹介されている通りです、と言っても仕方がないので、自分なりに紹介しよう。

 この作品は菌類が支配する星を舞台としている。人類も菌類であり、家畜なども菌類である。この星の人類がホモサピエンスに似た姿をしているのにはそれなりに理由がある。この星にある国家は女王が君臨する政体であり、職業は特定の種族が独占している。

 この物語の構造は「勇者が攫われたお姫様を救い出す」に近く、特に捻りのあるものではない (この星の人類は性別の区別が明確ではないが) 。この作品は、その星の人類の社会とその欠陥を描き出すことを目的としているらしく、そのために敢えて王道の筋書きにしているらしい。勇者は社会のすべての階層とあらゆる区画を駆け巡り、姫君とともに安住の地を目指す。

 この作品は社会の階層と、菌類による世界の仕組みを楽しむことができる。アクションの描写には難があり、また、説明口調の台詞も無いわけでは無い (単行本1巻分だけという短さの都合もあろう) 。主人公だけ近代的な思考をしているタイプに近いところもある。ただ、よく練り込まれた設定はそれを補うのに十分であり、世界の解説の文章もなかなか面白い。あと、殺伐とした世界ではあるが、女の子っぽい可愛いキャラが多い。キャラの可愛さは表紙を見ればお分かりいただけるだろう。

橙は、半透明に二度寝する 第1巻

阿部洋一

 この作品は、不思議な出来事が発生する町を舞台にした短編集といったようなものである。舞台が同じなだけで、話ごとの登場人物や非日常的な出来事との間につながりが必ずしもあるとは限らない。ただ、関係がないわけでもない。怪我をした警官が複数の話で登場するし、別の話の主要キャラが脇役として登場することもある。

 この作品を読むとまず目を引くのは、タッチが独特なことだろう。線は太く、筆で描いたような、それか、木版画のような感じで、一般的な漫画とは異なっている (一般的な漫画の定義は気にしないでほしい) 。ただ、それ以上に独特なのは作者の感性だ。

 前述の通り、不思議な出来事を主題に置く作品である。例えば、表紙の二人の女の子のうち片方は首しかない。第1話に描かれるそれは、いじめを契機に友情にひびが入り、それが悲劇的な結末に至りかけたという話だ。要するに一方が他方をこんな目に合わせたのだ。ただ、登場人物は不思議なことに対して妙に親和性が高い。驚くときは驚きもするが、平然と不思議なことや異常なことをやってのけたり、いとも容易くそれを受け容れたりする。第1話も、色々あったけれど、最終的には二人仲良くなってアダルトサイトの話などをするのである。誰も彼も、態度が不思議で不自然なのだ (悪い意味ではない) 。これを作者が計算でやってのけているとしたら相当の化け物だし、天然でもやはり化け物である (褒め言葉) 。私自身としてはその奇妙な味わいがあまり受け容れられなかったが、これを気に入れば、作者の世界に病みつきになることだろう。

P.S. 再度読み返したら、一周回ってすごく面白い気がしてきた。作者の他の漫画まで受け容れられる自信がないから買わないけれども。

断罪のユディト

うがつまつき

 私はこの作者を高く買っていた。何故、うがつ氏を気に入っていたかといえば、氏のウェブサイトに掲載されていた過去の同人誌をいたく気に入ったからである。だから、氏が商業デビューと聞いたときは嬉しかったものだ。結局第3巻で打ち切りになってしまったが。……こんなことを言っているけれども、作者の同人誌を買って読んだのは最近になってからだ。そもそも、こういう趣味を始めたのも最近なので、それは勘弁してほしい。面白かったですよ、「フライングバニラガール」。うがつ氏のエッセンスがよくにじみ出ておりました。グッドエンドになりかけた何かだったけれど、虚無感の溢れる表情や、絶望に沈みかけた表情が最高でした。あの結末の言葉が蛇足にならないことを祈っています。つまりは、続きがみたいということであります。

 この漫画は読み切り版が賞を獲得したことから連載が始まった (その読み切り版は単行本未収録……) 。作品の売りは、暴力とエロスとヒロイン(♂)とハイライトの無い目。お子様の買えない同人誌で鍛えぬかれた、触手攻めも濃厚なレズなんちゃらもある。やや荒削りな部分もあったし、登場人物の性格が濃すぎてついていけないところもあった。それでも、売りの部分は輝いていたし (目に光は無かったけれど) 、続きを楽しみにしていたのだが……。もっと布教すればよかったのかな……誰に布教すればいいのだろうなあ。

 最終巻はかなり展開が速く、最後にはラスボスらしき人物がベールを脱いでしまっている。作者はTwitterで続きをいつか描くという意欲を見せていたが、あの後からどうやって話をまとめるのだろう。桂良さんがアレしてアレされている姿が見たかったなあ。私は彼女の背景設定がかなり好きだったからなあ。

 何が言いたいかといえば、お気に入りの連載は大事にしようねという話です。それが無理でも同人誌は買おう。人に物を言うのは百万光年早いか。



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