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孤譚

思いつきで始めるブログ。漫画や音楽、アニメ、小説などの感想や、突飛な思いつきなどを書く。プログラミングが趣味だから、そういう話もしたいところ。一度失敗したのに懲りないのはいつものことだ。

筋肉少女帯のファンにおすすめ「藤田和日郎短編集② 暁の歌」 ~漫画の紹介・感想~

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筋肉少女帯のファンにおすすめ「藤田和日郎短編集② 暁の歌」 ~漫画の紹介・感想~

はじめに

 無意味に論説を振りかざすのが大好きなので漫画の紹介をしてみる。ネタバレは極力回避するが、起承転結の承辺りまでは書く可能性がある。今回も藤田和日郎氏の作品を紹介する。ネタバレを白文字で隠しているため、そこにも注意してほしい。 実は私は「藤田和日郎短編集①」の方を読んだことがない。何故先に②から手をつけたのかと言えば「空に羽が…」を読むためである。 この短篇は筋肉少女帯のある楽曲が発想の元になっていると聞いており、その話を確かめるためにこの単行本を手に取ったのである。

藤田和日郎短編集② 暁の歌

藤田和日郎

内容紹介

 藤田和日郎氏の短編集。幻想的な短篇漫画5篇を収録している。作者による各短篇についてのエッセイも収録されている。

 「瞬撃の虚空」はレーベンフック少佐と呼ばれる奇妙な眼鏡をかけた軍人が一瞬の体術で軍隊を壊滅に追い込む場面から始まる。一方、平和な東京の中流家庭に育って物足りない生活を送る淳一少年の家に突如アメリカの軍人たちが訪れる。彼らの目的は淳一の祖父をある作戦に参加させることだった。淳一は耄碌した老人にしか見えない祖父に何の用かと疑問に思いつつも、祖父の要望により米軍と同行する。淳一は目的地に到着するまでに祖父が別人のような風格を身につけていることに気がつく。淳一の祖父には淳一の知らない恐るべき過去があったのだ……。老人と彼の過去が生み出した怪物との一瞬の格闘に、少年は何を見るか。

 「空に羽が…」は強大な力で女王が国を支配する世界の物語。女王の暴虐に耐えかねた人々はレジスタンス活動を行うも、女王は自身が操る天から降り注ぐ災いの力で反乱者を一掃していた。そんな中で、丘の上で一人、片目が虫の目のようになっている男が機械を作っていた。この男は人々から「虫目」と呼ばれていた。人々は彼を邪法を操る不吉な男として忌み嫌い、見張りとして役立たずの少女・ゾナハを派遣する。ゾナハは男の気風に触れ、見張りの役目を無視して「虫目」と打ち解ける。一方で、人々は特別な術を使う三人の英雄を呼び、女王打倒の決意を固めていた。しかし、人々は女王の真の力への対処の必要性を知らなかったのだ……。理解されることなく闘っていた名も無い英雄の末路を描く。

 「ゲメル宇宙武器店」はアルミニュームが極めて珍しく美しい物質として扱われる宇宙を舞台としている。我らが地球で、オカノ・コースケが野球部のピッチャー兼生徒会長に片思いの相手をかっさらわれ、戦いを挑むことなく失恋に涙していた頃、地球に巨大な宇宙怪獣が襲来した。地球の破滅を目前にして、コースケが家から持ち出せたのはアンパンと貯めていた大量の一円玉だけであった。そんな情けない彼の元に現れたのは、宇宙を股にかけて活躍する女武器商人・ゲメルだった。ゲメルは大量のアルミニュームに惹かれ、コースケに武器を売りにやってきたのだ。怪獣は宇宙的に見ればありきたりのものと見え、ひ弱な男でも特別なクスリと武器を与えれば何とかなると踏み、ゲメルはコースケに1円玉と引き換えに武器を売りつける。しかし、怪獣は彼女たちの想像以上に強大で……。今まで敗北してきた男は危機の中で、己に足りない物が何かを悟る。

 「美食王の到着」は演劇のような体の作品で、単行本の表紙の少女・イーズーンはこの作品の主人公である。この国一番の踊り子であるイーズーンは国王の前で踊ってみせるが、それは復讐のためであった。国王はどんなものでも食べ物にする魔法の包丁を持っており、イーズーンの姉をその包丁で調理して食べてしまったのである。暴虐な国王は食道楽のために人々から食べ物を取り上げ、それを貪る毎日を送っていた。イーズーンは復讐のため、自らの体に毒を染み込ませ、国王に食べられる日を待っていた。イーズーンの踊りを見る国王の隣には、とぼけた顔つきをした男がいたが、その男は美食王、つまりは美食家の中の美食家と称されていた。国王はこの美食王に自らの食道楽の程を認めてもらおうと考えていたが、美食王の心中にはある思惑が……。結末では衝撃の真実が語られる。

 「帯刀石仏」は藤田和日郎氏がデビューする前に制作された作品。ある村に妖が現れるようになり、人々は恐怖に怯えていた。そんなとき、村に旅人が訪れる。旅人は妖の話を聞くと、ある望みを叶えてもらう代わりに妖退治を引き受け、刀を構える姿勢をとり始めた。人が話しかけても、雨が降っても、彼は構えをとったまま動かない。動かない旅人の世話をしに来た女は、言葉すらほとんど発さない彼と奇妙な会話を交わす。そしてある日、とうとう妖が旅人の元に現れ……。

感想

 「瞬撃の虚空」では老人が人間離れした格闘を見せる。この漫画の見所は当然ながらその戦いの描写である。しかし、老人の意志とそれに応えるひ弱な孫の姿、孤独な怪物との決戦など、人間模様の描写もまたこの漫画の面白いところである。私は再読してから面白さをより深く理解できた。

キラキラと輝くもの

「機械」が収録されている。

 「空に羽が…」は、筋肉少女帯のファンの間では「機械」という楽曲がその作品の発想の源であったことが知られている (作者のエッセイによれば、タニス・リーという女流作家の作品や、「未来惑星ザルドス」という映画も発想の元となったらしい。私はどちらも見たことがないのだが……) 。「機械」は筋肉少女帯のアルバム「キラキラと輝くもの」に収録されており、人々を救うための機械を作っていた狂った男とその男の言葉を唯一信じた女の物語を歌っている。この楽曲の結末は完全な幸福とは言いがたいものであった。そして、。筋肉少女帯のファンは必読の一篇である。

 「ゲメル宇宙武器店」はギャグの色合いが強い短篇である。宇宙武器の珍妙な名前や外見、登場人物たちのコミカルな振る舞いのために、私は物語についていけないところがあった。それでも、貧弱な男が自らに足りないものを自覚して勇気を見せる場面には見るべきところがあったと思う。

 「美食王の到着」は奇妙な空気の作品である。イーズーンの背景や美食王の過去など、シリアスな設定もある一方で、演劇風の語り口調、ナレーターに言い返す登場人物、美食王の風体や振る舞い、結末での一言などにより、読後は喜劇のような印象を受ける。イーズーンの過去や毒娘となるまでの過程は凄惨としかいいようがないのだが、美食王の活躍により物語は完全なハッピーエンドを迎えることになる。個人的にはかなり面白い作品だとは思うが、かなり変テコな印象が強い作品で、どう評価したらいいのか私にはよく分からない。

 「帯刀石仏」は面白い作品ではあるのだが、作者のデビュー前の作品であるだけあって、一つの作品として見ると物足りなさを感じる方もいるだろう。しかし、私としては作者の発想に驚くばかりであった。藤田和日郎氏のファン向けの作品である。



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