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孤譚

思いつきで始めるブログ。漫画や音楽、アニメ、小説などの感想や、突飛な思いつきなどを書く。プログラミングが趣味だから、そういう話もしたいところ。一度失敗したのに懲りないのはいつものことだ。

「がっこうぐらし!」原作とアニメの比較 ~アニメを見た人がとりあえず第5巻まで原作を読んだ感想~

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「がっこうぐらし!」原作とアニメの比較 ~アニメを見た人がとりあえず第5巻まで原作を読んだ感想~

原作
二つのアニメキービジュアル

アニメのキービジュアルは2種類あり、それぞれが作品の二つの側面を示している。

アニメの一コマ

アニメ第1話を宣伝するツイート。

アニメの一コマ

かわいい。

アニメの一コマ

……。

「がっこうぐらし!」購買部

私も秋葉原に偶然別の用事で立ち寄ったときにこのイベントの展示物を見かけたため観覧しに行った。予算が無かったから大したものを買わずに帰ったが……。

アニメオープニング

回ごとに細かく変化し、一部で話題になった。

 一時期、ネット界隈の一部では「がっこうぐらし!」という萌えアニメが流行っていた。衝撃的な展開があった第1話で話題に火がつき、アニメの内容だけでなくオープニングやエンディングの考察を行う人間まで現れた。キャラクターの衣装のデザインの意味を考察する人までいた。 漫画を原作としており、原作は海法紀光氏、作画は千葉サドル氏である。アニメとなったのは原作のうち第5巻までの部分である。私個人としては、件の第1話と第11話、第12話が特に面白かったと記憶している。

 原作にはアニメにない魅力があるという話を聞いていたため、長らく原作を読んでみたいと思っていた。現在、原作の単行本は第7巻まで出ている。しかし、予算が足らなかったり、馴染みの本屋で売り切れていたりしたために、気がついたらかなり時間が経ってしまっていた。最近になって第5巻まで揃えたものの、第6巻が売り切れていて未だに購入していない。いずれ続きも購入するつもりだが、今回はとりあえず、アニメと原作を比較しながら感想を書いてみようと思う。 ネタバレしかないため、新鮮な体験をとっておきたい方はここから先は読まないことをおすすめする。むしろ、原作既読済みの方でないと内容がよく分からないと思う。


 アニメ公式サイトのインタビューや原作既読者のネットでの書き込みから、原作を読む前からアニメとの相違点の一部は既に知っていた。原作を読む前に断片的に見聞きしていた情報はおおよそ次の通り。

  • アニメと原作の最も大きな違いは太郎丸の扱い。原作では一話限りのキャラクターだったが、アニメでは主役級の扱いだった。太郎丸の扱いの違いによりアニメでは遠足回や結末も大きく変化していた。ちなみに、アニメでのCVが某魔法少女アニメの宇宙生物と同じだったために一部界隈でネタにされたとか何とか。
  • 原作はアニメよりも描写が色々とハード。
  • 原作とアニメではストーリーの構成が異なる。
  • みーくんがけいと立てこもったモールには原作では他にも生存者がいた。
  • みーくんとりーさんの対立は原作の方が溝が深い (みーくんの「わんこ」発言にりーさんがつっこみを入れるシーン好き) 。
  • 原作では遠足の際にくるみが自宅に立ち寄っている。
  • 原作ではヘリコプターの墜落による火災で高校が使用不能になる。
  • 水着回はアニメオリジナル。
  • 原作は絶望の表情の表現に定評がある。女の子が絶望する描写が好きな人は原作を読むべき。

 特に最後の情報に色々と期待しながら第5巻まで読んでみたところ、前評判の通りの内容だった。展開が原作とアニメで大きく異なる部分も多く、原作とアニメは設定をある程度共有しているものの、共通する展開が少しあるだけの全く別の作品という印象だった。更に言えば、原作では描写がハードだという話は想像以上だった。アニメがハードでなかったというわけではないが、えらくほんかわとした展開が多かったという印象がある。原作の方は絶望の描写がすさまじく、そのためによりハードであるという印象を覚えた。実際、原作の方が学園生活部の面々は精神的に限界に近い状態だったのではなかろうか。

 かといって、アニメが原作よりも劣っているというわけではない。アニメオリジナルの展開や描写も原作に負けず劣らず面白かった部分もあった。 例えば、アニメ第1話のゆきの視点とみーくんの視点の違いの描写はかなり気に入っている。ゆきの平和で暖かな視点から見たみーくんの奇妙な行動 (授業中の教室にためらうことなく突っ込むなど) や違和感のある描写 (閉まった窓からの風の音、机のバリケードなど) の種明かしという展開は、それだけで一つの作品として独立させられるほどの価値があったと思う。頭の中の友達と「犬であることを伏せて太郎丸の話をして太郎丸を男友達と勘違いさせる」、「その後に太郎丸が犬であることを明かす」という面白会話をする一連の流れを一人で作っているのかと考えると色々と思うところがある。 また、アニメではゆきとめぐねえが絡む描写が原作よりも多かった。遠足回以降のめぐねえとグーマちゃん (熊のぬいぐるみ) の関係の話は原作には存在しなかった。ゆきがめぐねえの最期の言葉を思い出し、仲間を救うために勇気を振り絞って現実の惨状を直視する流れもアニメオリジナルで、この展開を私はかなり気に入っている。原作に無くて逆に驚いたくらいである。

 また、原作ではみーくんがゆきの状態を心理学の書籍から把握しようとし、心理学の知見を背景にゆきの真意を聞き出そうとする描写があった。原作のゆきは妄想の視点と現実世界の視点を都合よく切り替えているところがあるように感じた。遠足のときの逃走の場面やみーくんを助けに行こうとしたシーン、バリケードを越えようとするみーくんを引き止める場面、くるみの眠る部屋から退出した後涙するシーン、くるみを看護するシーン、掃除中に女生徒と遭遇した場面などは、完全に妄想の世界に浸っている人間の行動であるとは思えない。仲間の目がないところでだけ妙に現状を理解しているかのような行動をとる描写がある。仲間がいなくなる悪夢から覚めた後、周りに誰もいなくて叫び声をあげる場面は、平和で幸福な妄想も現実の認識を覆い隠しきれていないことを思わせる。全くの演技というわけではないとしても、みーくんの推測も当たっている部分がある気がする。

 原作では、ヘリコプター墜落後、ゆきが立ち去ってからりーさんが泣き崩れるという描写がある。めぐねえ亡き後はりーさんが学園生活部を引っ張っていた。そんな中でようやく助けが来たと期待したところでこの結末だったのだから、あくまでも女子高生であるりーさんの精神が限界を迎えても不思議ではない。くるみに包丁でとどめをさそうか逡巡するということもあった (みーくんはよくあの場面でりーさんに平静に話しかけられたものだ) 。庇護の対象であり現実逃避の手段でもあったゆきがその場を去った後に泣き崩れるというのも印象的である。そういえば、第6巻以降、りーさんの様子がおかしくなるという噂を聞いたのだが……。

 他にも原作とアニメでは細々とした違いがある。アニメではやや不自然な描写 (第4話末尾で夕方だったのが、第5話では午前になっているところなど) が原作では自然なものになっているという部分もある。それと、原作はキャラクターの口調があまり統一されていない気がする。 ただ、それ以外にも些末な違いで妙に印象に残ったところがある。それは、遠足の帰りに気を失ったゆきとみーくんを手錠で拘束していたという描写だ。原作ではみーくんを助けるときの負傷の度合いがアニメよりもひどく、ゆきとみーくんは感染が疑われたのだ。目を覚ました後も一度はシャベルを向けられることとなる。ほんの些細な描写だが、彼女たちが仲間の無事を疑わなければならないほどにどうしようもない状況に追い込まれていることが分かる場面だった (まあ、この場面は後にそこそこ重大な意味を持つようになるから、些末というほど些末でもないかもしれないが) 。

 様々な要因により妄想の世界を見ている人物、恋人に一撃を加えた凶器を常に手放さずにいる人物と、色々と綻びの見える学園生活部だが、卒業の後に滅亡に瀕した世界をどのように生き延びるのか、続きの巻も早く読んでみたいものだ。

……というわけで続きを買ってきた。第6巻感想もよろしければどうぞ。



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