思いつきで始めるブログ。漫画や音楽、アニメ、小説などの感想や、突飛な思いつきなどを書く。プログラミングが趣味だから、そういう話もしたいところ。一度失敗したのに懲りないのはいつものことだ。
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無意味に論説を振りかざすのが大好きなので漫画の紹介をしてみる。ネタバレは極力回避するが、起承転結の承辺りまでは書く可能性がある。今回紹介する漫画はWeb漫画3作。どれも現在連載中である。ネタバレを白文字で隠しているため、そこにも注意してほしい。
少女と黒猫の隠された秘密
少女・ココは黒猫のクロと一緒に大きな屋敷の中で暮らしている。二人ぼっちの暮らしだけれど、ココにはミルクとマリアの2人の友人がいるし、家庭教師のブレンダ先生と娘のセサミもいる。それに、クロと一緒の暮らしは淋しくはない。しかし、クロには大きな秘密があった……。
「黒」は「となりのヤングジャンプ」で連載中のフルカラーWeb漫画であり、現在単行本が2巻出ている。おそらく、話のまとまり具合を見るに、単行本3巻か4巻で終了するのではないかと思われる。全体として、不穏な描写が好きな方と、少女の肢体に魅力を感じる方と、ほんの少しばかりのグロテスクな描写が好きな方におすすめの作品である。
この作品は少女・ココと黒猫のクロの日常生活を可愛らしい絵柄で描いたものである。ペットを扱う漫画のようなところがあり、猫を飼うと日常的に見かける出来事などを描いていることがある。ただ、少しでも読めば分かるためはっきりと断言するが、クロは猫ではない。形こそ猫のようであるが、見るからに口の形がまともではない。口以外は猫らしいのかと言えば、猫らしい仕草をとりはするが、鳴き声がおかしかったり口から怪しい触手が生えたりするからやはり猫ではない。
そして、異常なのはクロだけではない。読み進めていくほどに、作品世界の中の狂っている何かが徐々に見え隠れする。具体的に指摘すると、窓の外に見える黒光りする影、顔が異常な状態になった雀、そして、子供が何故か猫らしき何かと一緒にたった一人で館の中で暮らしているという事実 (親はどこへ行ったのか) など。ペット漫画のような体で、何事もなかったかのように異常な世界が描写されていく。この漫画作品を最初に読み始めたときの面白さはこの不気味さにある。絵柄と主人公が可愛らしいためにその不穏さはより鮮明に浮かび上がっていくのだ。
更に読み進めると、作中の謎の答えや登場人物の言動の理由が徐々に明かされていく。そして、ココもまた異常な状態にあるのではないかと感じさせる描写も増えていく (特に第2巻第66話に注目したい) 。最初に不自然な均衡状態にあったものがどのように転落し、変化していくのかを追っていく楽しみが増す。最初の不穏の影の楽しみは後に性質を変え、更には謎の中を手探りする楽しみが増す。今後の更新によってどのような結末に至るのかが楽しみでならない。
なお、単行本にはWeb版では現在公開されていないエピソードが掲載されている。もちろんこれらの話も面白いものばかりであるが、その中で特に面白いと感じたのは第1巻の68.5話である。ココとクロが大冒険する話であり、普段の態度とは違ってココがクロの異常さを理解しており、クロが自分の力を使って大活躍する。この冒険譚には実際のところは裏があったのだが、1人と1匹の大活劇は見ていて楽しいものであり、結末の1コマは色々な意味で強く印象に残るものだった。この話などから、ココがクロの異常性を本当は理解していることが分かる。
ある人形作家の魔法がもたらした奇跡
となジャンさんにて「ツインドルの箱庭」第1話~第6話公開中/次回更新は6月予定です(単行本第1巻は夏頃の予定です!)【https://t.co/N8l7OOXzbd】 pic.twitter.com/mzrFmOPwSY
— 星になれなかったまちこ (@CHINO_MACHICO) 2016年3月7日
舞台は魔法が日常となった魔法使いたちの世界。双子の魔法使いのジゼルとジルは同じ杖をもち、物を魔法の糸で縫い合わせて命を与える魔法を使う。二人は夢を叶え、姉のジゼルは看護師に、弟のジルはぬいぐるみ職人になった。ジルの使う魔法はぬいぐるみにかりそめの命を与え、その腕前から高名な職人となった。しかし、ジゼルは失敗ばかりで看護師としての評判は悪い。かつては同じ物を見ていたはずの二人は境遇を違え、ジルの姉への愛情は空回りし、ジゼルは落ち込むばかりの日々。しかし、その日常は花火の事故を契機に大きく変化する。祭りに使う花火が地上で爆発し、多くの魔法使いたちの体がばらばらになってしまったのだ。
ジゼルは事故の犠牲者の遺体を縫い合わせる仕事を自ら志願し、その仕事をやってのける。ジゼルはたった一人で遺体を修復した偉業を認められ有名人となる。しかし、死体に触れ続けた影響でジゼルの杖は呪われ、その影響でジルの杖も同じ呪いにかかる。このためにジルはぬいぐるみ職人の仕事を失い、つい姉に辛く当たってしまう。それが災いしたのか、ジゼルは弟に何も告げることなく突如姿をくらます。多くの人がこの偉人の行方の調査に挑んだが、誰も彼女を見つけることができなかった。ジルは失意と後悔に沈みつつも、姉と一緒の暮らしを取り戻すため、彼女を自ら探し出すことを決意する。しかし、ジゼルが姿を消した理由は、ジルの想像を大きく超えたものだった……。
第1部での主要人物は5人。人形作家の双子と三人の奇人。彼らが織り成す物語に注目しよう。
「ツインドルの箱庭」はこちらも「となりのヤングジャンプ」で連載中のフルカラーWeb漫画であり、単行本すら出ていない比較的新しい作品である。現在第1部が終了し、第2部は2016年6月から開始するそうだ。Web漫画は色の制限が少なく、フルカラーの連載も漫画家が描きさえすれば (白黒よりも時間はかかるだろうが) 可能である。「黒」もそうだが、フルカラーの漫画がこうして手軽に読めるのはかなり幸福なことだと思う。
この漫画を読んで最初に目を引くのはやはり、フルカラーの恩恵を活かした色と線の美麗で繊細な表現だろう。この作品では魔法の産物の花や工芸品などが数多く描かれるのだが、豊富な色を使った美しく緻密な絵はそれだけで価値のあるものである。具象だけでなく精神世界の抽象的な描写も頻出するのだが、これもまたデザイン性に富んだ面白さがある。
そして、この作品の優れた部分は外見だけではない。第1部の5名の主要登場人物のドラマも見所の一つである。第1部の主軸は、ジゼルがどうして遺体の修復作業を自ら引き受け、そして行方をくらますことになったのかという経緯であるのだが、それにはニコラという花屋の魔法使いが鍵を握っている。 ニコラは花や植物を扱う魔法を使う人物で、ジルのファンであり、ジルの友人でもあるのだが、ニコラが興味があったのはジル自身ではなく、ぬいぐるみそのものとも言いがたい。本当に関心があったのはぬいぐるみを作る魔法である。彼は花火の事故に巻き込まれたことをきっかけにジゼルの治療を受ける。その後、彼のぬいぐるみを直してもらうのだが、実はジゼルの方が弟よりもぬいぐるみに命を吹き込む魔法は上手だったのだ。ニコラはジゼルの魔法を独占するために、意図的にジゼルを罠に嵌めようとする。ニコラは血の通う生き物が嫌いで、人間に対する親愛の念が希薄であり、魔法が植物を対象にしていることもそれを反映したものだろう。 ジゼル自身はおそらく自分の魔法に弟よりも優れた部分があることに気がついていないし、遺体の修復に取り組もうとしたときは自分の魔法の特質を深くは理解していなかったのだろう。ジゼルは根は単純な人柄で、今までの鬱屈とした感情をニコラに利用され、彼の手中に落ちることになる。 他の登場人物も、とてつもない胡散臭さを放つエルガルド、兄と比べればまともなホワイトリー、姉の駆け落ちを疑ったときに何故か目の中でハートが割れたジルと個性的で面白い面々ばかりである。色々な意味でジルが最も倫理的に危なっかしい性格をしている気がするぞ……。多分、性欲とかは無い感じの人だと思うが。
第2部以降は「箱庭」が物語の中心になると思われる。おそらくゾンゾンちゃんについても深く描写されるのではなかろうか。作者はハッピーツリーフレンズに関心のある人物らしく、私としてはその手の描写にも力を入れてくれることを期待したい。愛らしさとおぞましさを両立した描写がなされることを期待している。 ゾンゾンちゃんたちの本来の家族をどうやって黙らせているのかという疑問点はあるが (記憶を操る魔法使いがいるようだから、その人物の力を使ったのだろうか) 、そこが説明されてもされなくても、次の更新のある6月をわくわくしながら待つつもりだし、いずれ発売される単行本も購入する所存である。それをするだけの価値のある作品だと思う。
理想と現実の衝突
少女・ミカゼは祭りの金魚すくいでもらった金魚を飼ってから、魚に愛着をもち、魚を食べるのを拒むようになる。環境問題を扱うテレビ番組や小学校での教育、更には小学校でのある事件を通じて生き物への関心を広げ、ミカゼは金魚を元の場所に帰そうと決心する。しかし、小さな彼女にとって現実世界はあまりに広すぎた。理想が現実に敗れた後、ミカゼは不登校になり、魚や肉を食べることを拒み、メディアを通じて「金魚王国」という名の動物を支配する人間の悪の性質を看破する思想を構築する。しかし、友人のユカに植物を食べることの矛盾を突きつけられ、ミカゼは植物食すら拒否しようとするも長くは続かなかった。ミカゼは理想と現実の葛藤に疲れ、理想と現実の矛盾を和らげようと人間を相対的に見る「超食虫植物ネクトペントス」の説話などを用意するが……。
番外編もある。カホは「ウォウー」という鳴き声が特徴的な「・w・」という感じの容貌の少女。彼女は街中で水槽に入ったエビを見てからエビに興味を抱くようになる。エビを飼うために家事の手伝いをして小遣いを貯めるのだが……。
「金魚王国の崩壊」は私が模造クリスタルという方の存在を初めて知った作品である。各部の表紙絵が名画の一部を金魚に置き換えたものになっているのが印象的である。まだ完結しておらず、ときどき更新されて新しいページが追加される。おそらく商業ではなく同人の作品である。「金魚王国の崩壊」は一部界隈ではかなり有名らしく、台詞の中にはネットスラングと化したものもあるらしい。ところで、「少女王国の崩壊」と何か関係あるんですかね……。
この作品に描かれているものは理想と現実の葛藤ではないかと私は思う。主人公・ミカゼは金魚を飼うという、普通の人からすれば瑣末な出来事を契機に「動物を食べることは悪なのではないか」という考えを抱くようになり、その理想を現実のものにしようとする。しかし、一介の少女にとって現実の壁は高く、思想の修正や妥協を余儀なくされることとなる。ミカゼはテレビや本などのメディアから情報を受け取り、思考を巡らせ、こしらえた思想をどうにか愚直に守ろうとする。しかし、理想の遵守は難しく、葛藤に疲弊し、思想を現実と擦り合わせようとする。
彼女の周囲の両親や教師といった大人たちは、現実主義というほどではないにしろ、ミカゼほどには物を考えず、適当な理屈を用意して現実に対応している。ミカゼは大人の庇護の下にあるからこそ思考している余裕があるのかもしれないが、それでも理想の考察に苦悩する日々を送ることになる。 何とか理想と現実の妥協点を用意しようとしても、友人のユカに思想の欠点を指摘され、そのうえ新たにこしらえた理想も現実とどこかずれがあるのか、新たな葛藤がミカゼを苦しめることになる。読者の私としても、昔の自分を思い出してもどかしさを感じさせる。
ミカゼは苦悩する思想家であり、その思考はしばしば空想や比喩表現をもってして行われる。 「ビーンク&ロサ」では唐突に空想としか思えない描写が出現したために、読者の私は混乱させられた。この作品でも「超食虫植物ネクトペントス」や「ゴリラ人間」、「金魚」などの空想の表現があるが、これはミカゼの思想や考察を漫画的に表現したものであり、「ビーンク&ロサ」ほどには支離滅裂な印象を与えない。むしろ、この作品では物語を明瞭にして面白くする効果があると思う。
ミカゼはユカの言動にどう対応すればいいか悩んでいる。見たところ、ユカはミカゼの唯一の友人であるらしく、その苦悩がミカゼの思想に再び変化をもたらすだろう。思想がいかに変遷していくか、いかに現実の問題と衝突するか、それを楽しみにしながら、更新を待ちたいところである。