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孤島の奇譚

思いつきで始めるブログ。漫画や音楽、アニメ、小説などの感想や、突飛な思いつきなどを書く。プログラミングが趣味だから、そういう話もしたいところ。一度失敗したのに懲りないのはいつものことだ。移動しました→http://isolated-hyakunin-isshu.blogspot.jp/

SCP-173の罪

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SCP-173の罪

この記事は元来は別のサイトで投稿していたものです。

 あなたは「SCP財団」 (SCP Foundation) というウェブサイトをご存知だろうか。ここ数年で日本国内でも知名度が高まっているが、元来は海外発の創作コミュニティである。このウェブサイトでは、奇妙な事物を管理するために謎の集団が記した文書という体で書かれた記事を中心とした創作物が日々制作されている。SCPの元祖は「SCP-173」という記事である。この記事がSCPで最も有名な作品だと思われる。しかし、SCP-173を知っていても、この記事自体の由来とその記事で使用された画像の出典まで知っているという方はごく一部なのではなかろうか。

 SCP-173として知られる文書は、海外の画像掲示板「4chan」の/x/で作成されたものが元になっている。出典の不明な謎の写真とともに書かれたこの文書は、前述の掲示板で大流行し、似たような構成の文書が多く生まれた。それからいくらかの変遷を経て現在のWikidotの形態に至っている。つまり、全てのSCPはこの4chanの文書の二次創作であると言え、SCP-173と同様の形式の記事やTaleなどの全ての作品はSCP-173をルーツとしている。

 画像掲示板と言えば、日本国内にも、独自の用語を使用する奇妙な人々が跋扈する生まれたばかりの掲示板が存在するが、おそらく4chanで生まれたSCPも本来はその文化と似たような流れで生まれたのだろう。SCP-173は元来はちょっとした遊びであり、その出来が極めて良かったために現在の巨大なサイト群にまで成長したものと思われる。ちょっとした遊びのためにわざわざ画像の出典を探そうとまでは思わないし、ライセンスがどうこうと法的な話まで考えはしない。

 実のところ、件の作品で使用された写真に写っていた物体の正体は芸術家の加藤泉氏の作品・Untitled 2004であった。後に、加藤氏から商用利用をしないなどの条件で利用が正式に許可され、加藤氏のご厚意により法的な問題に発展することは回避されたのだが、それは事後承諾という形であった (http://www.scp-wiki.net/forum/t-76692/scp-173#post-2106398) 。加藤氏は自身の作品をSCP-173としての利用する許可を出す際に、SCP-173と自身の作品は全く別のコンセプトであると述べている。加藤氏がどのような意図であの作品を制作したのかは私は知らないが、少なくとも人間の首を締めてくる怪物ではなかっただろう。

 私が問題にしたいのは件の画像の法的な問題ではない。それについてはもう話がついている。問題なのは、SCP-173が非常に優れた作品であるということだ。SCP-173は驚異的な作品である。だからこそ、数多くの後続者が現れ、現在のSCPの発展に至っているわけであるが、SCP-173はその素晴らしさに罪がある。

 SCP-173は怪物が主人公の作品であるが、その怪物は威圧的に牙を並べた姿ではなく、そのためにいっそう不気味さを感じさせる。怪物は奇妙な振舞いをするが、その意図は不明であるし、そもそも意図があるのかも分からない。自然に生まれてしまったのか、それとも誰かが作り出したのか、それすらも定かではない。そして、その怪物を管理する存在がいて、それは怪物を管理するための手法を確立し、人間を消耗品扱いしながらも管理に成功しているようだ。怪物自体も魅力的であるが、その周辺も興味深い謎に満ちている。SCP-173を一読した人間が、その強大な魅力を頭から除去するのは難しいことだろう。そして、その魅力は長く長く頭の中に留まり続けることだろう。加藤氏の作品を鑑賞したいときにさえも。SCP-173の魅力を知った人間が、加藤氏の件の作品から得られる印象から不気味な怪物の姿を振り払うことができるだろうか。

 加藤氏のあの作品を見て、SCP-173の不気味な文章を連想してしまうのは、鑑賞者にとって不幸なことでもある。件の作品は見ようによっては不気味に思えるが、むしろ優しい印象を抱く人もいるのではなかろうか。加藤氏の意図とは別に、鑑賞者は作品から様々な印象や感想を抱く可能性がある。しかし、その可能性はSCP-173を見た後には大きく狭まることだろう。SCP-173と加藤氏の作品は別のコンセプトであると「考える」ことはできても、SCP-173という優れた文章の影響から完全に逃れることは難しいのではなかろうか。SCP-173は優れた作品であり、そのために有名になり、日本語を含む様々な言語にまで翻訳された。今もSCP-173は多くの人々を魅了し、加藤氏の作品を鑑賞する者にある種の枷を与え続けていることだろう。SCP-173は画像で遊んだ結果生まれた作品であり、あまりの秀逸さに創作サイトまで作り上げてしまったという力を秘めていたが、それだけに私は罪深さを感じてしまうのである。

参考文献



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